歌劇「ラオールの王」(2)

第二幕より(2) 第二幕より(3) 第三幕より

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第二幕より
広大なトールの荒れた砂漠。軍隊の野営を行っているテントの前で数人の兵士達がチェスをやって遊んでいます。更に遠方の方でペルシャの奴隷少女が軍隊の隊長の為にダンスを披露。
一方シータはそんな兵士達の姿を見ながら戦場で戦う王アリムの身を案じています。
兵士達
白い王へ王手!
シータ
聞いて頂戴!あの遠くで戦う猛烈な音を。
カレド
うん。敵軍隊は再び撃退されたよ。アリム様はもう直帰還されるよ。何時も勝利だよ!
シータ
アリム様は無事に帰還なさるわ!・・・きっと帰って来られる!
軍隊の隊長と兵士達
さぁ、戦え!・・・力が加わってくるぞー!よし、それで良いんだ!・・・よっしゃ!上手くやれたぞ!勇気を持とうや!

シータはチェスをして遊んでいる人々に思い沈んだかの様に近寄ります。
シータ
アリム様はきっと戻られます。何時も勝利です。
軍隊の隊長
黒い王は凄く上手くいってるぜ!
兵士達(砂漠の方を指して)
おっ、あそこでアリム様にマフモウドが!
全員
王手!白い王だぜー!(立ち上がって駒をひっくり返します)
(中略)

心配そうにしているシータをカレドは慰めます。
カレド
あぁ、勝利の叫びが・・・!アリム様はもう直戻られるよ!

シータ
アリム様はきっと勝利なさるわ!でも私自身この砂漠という未知で危険な場所にいるから、その事が私の心を恐怖で収縮させられるの。
カレド
いや、シータ。もっと自分自身が平静にならないと。静かに休もうよ!

シータ&カレド
平等な事は堕落してしまう。柔らかな風は休息の為に金色の雲を振るわせる。自然は全て今の容易さを獲るかもしれないし、静かに眠った胸の上で沈んで行くかもしれない。使い尽くされた地上での愛撫、願い等を平等にするという悪を備え、夜は喘ぐ平原を横切り、時間も忘れてしまう涼しい影は落ちて行く。柔らかな風は休息の為に金色の雲を振るわせる。戦いの激しい音は収まり、遠くて近い静寂になる。私はもう心配しない!あぁ、シータ、もう心配要らないよ!あぁ、神は我々の祈りをお聞き下さいました。

(中略)
シータ
あの方には私の心を見せない様にして、その心を大事にするの。そして柔らかい甘い感覚を味わうの!私は貴方様を祝福致します。私は幸福です!
カレド
全ては休息の為に休むんだよ。
(中略)
シータ
甘美な感覚を与えられた事で私は貴方様を祝福致します。私は幸福です。
カレド
休息する魅力的な女性への愛情は夜になると君の元へ
金色の夢を持ってくるかもしれないよ。君の君主である王様は自身の喜びの心を持って直にでも来て下さるよ。あの方の宝が君の元へ返ってくるよ。
君の目を閉じ、僕の女性は明瞭により静かに昼間より夜は証してくれる。悲嘆な全ての恐れを取り除こうよ。ヌガーの愛は愛の夢より甘い。夜中に歌う僕の浮浪の歌。甘い喜びの中にいる君の夢を大事に抱えて飛んで行くのをぴんと張る時間に拍車をかけて、君の胸の内の希望を約束するんだ。あの方は直に戻られるよ。君の勝利者は祝福したよ!柔らかなそよ風は急いで彼女の元へやって来るんだ!愛の吐息、魅惑された微風、おぉ、君の翼、彼女への忠実な恋人からの甘いキス!あぁ、どうか彼女に運んで下さい!彼女に魅惑的な微風を運んでやって下さい!(中略)

遠くでのファンファーレで静けさが破られます。

軍隊の隊長と兵士達
皆で戦ったのに・・・皆で!完全にやられちまった!全部やられちまった!必死で戦ったのに・・・!死が俺達に迫って来てるぞ!黒い大部隊が平原を満たしよった!もう全滅だ!あれだけ戦ったのに・・・全部遠くでやられちまった!
恐れと苦痛に苛まれるシンディアが登場。
シンディア
兵士よ、王はなぁ、打たれたんや!もう死にかけやで!
軍隊の隊長と兵士達
王様が打たれたのか・・・。
シンディア
一つの執念深い手で王は3回打たれたんや!・・・そうや!もうあの王の統治は終わったんや!ふん、冒涜の愛情は神が一番良く知っとるんや!それで奴を罰するんや!アホが・・・。あんな王なんか誰が従うかい!そやから神はテメェを屠殺する野蛮な大群で無慈悲に扱うんや、ボケが!お前らのリーダーはなぁ、支援を求めたんや!けど俺はここにおるぞ!あっ、そうや!お前らを連れて行ったろやないか。俺に従えよ!
兵士達
はい!我々は全て誓います!
シンディア
誓うぞー!
兵士達
こことラオールでは貴方様だけに我等は従います!
シンディア
お前らの全てや!おい、兵士よ、明日の夜明け前に立ち去ろうや!今夜の内にちゃんと撤退の準備しとけよ!
兵士達
太陽が昇る前に撤退しようぜ!こんな負け戦・・・これ以上戦えんぞぉー!
(中略)
シンディア
俺らは自身の力で撤退するんや!
兵士達
もう全部降参だぁ!撤退だぁ!どうせアリム様が抵抗しても無理に決まってるんだ!さぁ、ラオールへ撤退だー!
シンディア
ラオールへ!
全員
ラオールへ!


全員が撤退しようとすると、負傷した王アリムが登場し、シンディアや兵士達を逃げようとした事で非難します。

第二幕より(2)
アリム
私はお前達が撤退するという事は聞いているぞ!・・・命令する!私は王だ!生きているぞ!どうせ臆病者は私の命令を放棄するだろう。私は分かっているのだ。臆病者よ、私はお前達が早く撤退出来る様にする為に惜しみなく血を流した!臆病者よ、私は負傷しているが静かに立っているのだ!私は最後まで戦うぞ!あぁ、敗北する事無く死ぬまで戦うぞ!!!
兵士達
我々はもう命令されているのです!
アリム
どんな不明瞭な悪巧みがお前達を惑わせたのだ。私はお前達を敗北への道から再び勝利の栄光へ導かねばならないのだ!
兵士達
神の力で人々や我々を解放して下さったのです!貴方様の勇気は我々を守る事が出来ませんでした!王様、我々はもう命令されているのです!
アリム
お前達を勝利の栄光へ導いてやる!
兵士達
ダメです!王様、死に突入するだけです!
シンディア
もう無理でっせ!
(中略)
兵士達
これ以上は兵士を招集出来ませんよ!絶対に無理です!死に突入するだけです!
シンディア
それやったら勝手に行きなはれ!
アリム
下劣な者達め!
(中略)
兵士達
栄光なる王様!しかしこれ以上は兵士を招集出来ませんよ!もう貴方様の脅しです!
シンディア
王!
兵士達
我々の貴方様への忠誠心は強化します!でももうダメです!ここにいて下さい!もう兵士はこれ以上招集出来ません!

シンディアは傷付いた王アリムに対して憎しみを込めた言葉を投げつけます。
シンディア
・・・ふん、もう王位はありませんのやで!ここにいる者どもは今は俺のもんですさかいになぁ!(中略)・・・そうや!あんたさんの堕落はこの俺の嫌悪でなりましたんやで!俺はあんたが憎たらしい!ムカつくんじゃぁ!えぇ加減にせえよ!
アリム
お前は一体何を言っているのだ?
兵士達
アリム様の抵抗は無理に決まってる!
シンディア
あんたさんは俺から愛しいシータを奪い取りましたやないか!
アリム
シータ・・・!お前は彼女を愛していたのか?
シンディア
シータを奪い取りやがって・・・!!!
(中略)
シンディア
俺はなぁ、長い間傷付いた誇りを沈黙させとったんや!けどなぁ、腹いせの日はとうとう来たんや!行けー!死んでまえー!こらぁー、アリムー!覚えとけよーーー!復讐したるからなぁ!このクソダボがぁーーー!

シンディアのこの言葉に王アリムは激怒します。
アリム
あぁ、分かったぞ!お前には敗北と言う借りがある!お前のものは私を打ちのめした手だ!反逆者め!殺人者め!こいつを捕らえろ!(シンディアの逮捕を兵士達に命じますが誰も言う事を聞きません)どういう事だ!誰も王の命令が聞けないのか!誰一人も・・・!
シンディア
ふん、抵抗しても無駄やで!えぇ加減に諦めんかい!
(中略)
兵士達
神の手は貴方を限界に追いやってしまうのですよ!
アリム
神の手は私を限界に追いやってしまうのか・・・。
兵士達
王様、死神が連隊を成して貴方に迫って来ているのですよ!
(中略勇敢な王様、これ以上は戦えません!兵士を招集出来ません!ここにいて下さい!

絶望感に苛まれたアリムはクッションの上に倒れ込み、意識不明に陥ります。


第二幕より(3)
シータが倒れたアリムの元へ駆けつけます。
シータ

私はこの絶望的な時の中にたった独りでいるのです。(突然決心したかのように)とても良くなっております。私が独りで貴方様をお救い致します。
アリム(次第に意識を取り戻し)
シータ、君の声が聞えるよ・・・。
シータ
はい、私はここにおります。貴方様を愛しております。全力でお救い致します。
アリム
私を愛してくれているのか・・・。君は私を愛してくれている。私の心がずっと望んでいた言葉だ。あぁ、今初めてその言葉を聞ける。君に会える!君の内気な唇から待ち望んでいた言葉を再び聞かせてくれた!
(中略)
シータ
私は貴方様を愛しているのです。お救い致します。
アリム
私を救ってくれる為に・・・!だがもう遅すぎる!甘い将来の夢の事や無我夢中に誓った事はもう忘れてくれ!私をここに残してくれ!私の人生は腹を立てた神を慰めるのに十分だ!
シータ
あぁ、私には更に神の激怒の復讐と言う重荷を背負わせてくださいませ!それで私を殺させて下さいませ!私は強くなるのです!もう何も心配は致しません!私の心が貴方様に近付いた時はこの苦痛を祝福致します。(中略)私達の心を一つにして打ちましょう!
シータ&アリム
私達は心を一つにして打ちましょう!心は一つとなり鼓動するのです!私はあなたの側で死ぬ事が出来ます様に・・・!

アリム
もう行ってくれ!私は神に打たれるのだ!
シータ
自身の為にこの苦痛を祝福致します!私は貴方を愛しております!私は残ります!運命を受け入れましょう!
アリム
シータ、私に心を与えてくれているのだが私は傷付いている。行ってくれ!私は神に打たれるのだ!いつか君の心を私に与えてくれ!
(中略)
アリム
あぁ、君は私のものだ!
アリム&シータ
私達の心はひとつとなり鼓動するのです。私はあなたの側で死にます様に!私達の心は一つとなり鼓動するのです!私もあなたの側で死ぬかもしれません!

遠くの方でファンファーレの音が鳴り響いてき、兵士達の叫び声が聞えてきます。
兵士達
ラオールへ!ラオールへ!
アリム
あいつ達は何と言っているのだ!恥だ!脱走兵達め!本当の事だ!
シータ
希望を絶たないで下さいませ!
アリム
反逆者達め!!!
シータ
希望をお持ち下さい!天の神インドゥラはきっと私達を聞き入れて下さいます!
アリム
汚れた者たちめ!私は呪われている!私を残してくれ!シータ、君には生きていて欲しい!
シータ
どうか、このお方に哀れみを!
アリム
あぁ・・・!
シータ
私達の愛を・・・神のお力で私達を守って下さいます!
アリム
私はもう死ぬだろう・・・愛しい人よ、もう別れよう!
兵士達
ラオールへ!
アリム
私はあいつ達を止めねばならない!あいつ達に付いて行く!
シータ
軍隊が
アリム
軍隊だ!汚れた反逆者め!あいつ達は遠方へ進んでいる!(次第によろめきはじめます)
シータ
あぁ、神よ!
アリム
あぁ、シータ!私は呪われている!

アリムは遂に崩れ落ち、そのまま命は力尽きました。
シータ
アリム様・・・死んでしまった・・・!
兵士達
ラオールへ!

突然シンディアが現れ、シータを捕らえます。
シンディア
ふん、こいつはもう死んだんや!これからは俺が王やぞ!
シータ
あぁ、シンディア様ーーー!!!

シータは気を失ってしまいます。

第三幕より
メルー山の山頂。神インドゥラの楽園(霊界)にある神聖な庭で情熱的な光を浴びた植物が茂っています。人々の魂は天の住人達を従えた神インドゥラの周りに集まり、ダンスを披露します。
天の住人達と神聖な魂
栄光なる楽園を御覧なさい!栄光の全ての光を、全ては光なのです!死の束縛から解放されて私達は天の喜びの中で生命の苦しみを忘れ、高く舞い上がるのです!私達の額で光る夜明けを常に曇らせない様にする為に百万年が過ぎるかも知れません。そして更に百万年。
百万年もの間中魅惑されたこの庭では、永遠の若さが永遠の楽しみに寄って光を放たれます。全ては光なのです。あぁ、全て光なのです!

神インドゥラが憔悴しきった様子の新参者が入って来るのを見て、披露されていたダンスを止めさせます。

インドゥラ
誰か来るのか・・・?まるで天の楽しみに無関心なのか・・・この者の顔は青白くうな垂れているではないか。(アリムが入って来ます)男よ、お前はニコリともせぬのか?ここにいる者達は全てお前自身であるぞ!
アリム
昨日までは私は誰もが羨む様な王だったのです。人生の中で偉大であり、幸運な者として称えられていたのです。その甘美な喜びで満たされた私の魂は愛の夢に寄って癒されていたのです。
インドゥラ
永遠の希望は・・・。

アリム
天の王、どうか私の願いをお聞き入れ下さい!どうか私を愛する彼女の元へ戻して下さい!
インドゥラ
だが、彼女はまだここへ来てないぞ。
アリム
しかし死神は貴方様に
従っています。天の王、私はまだ幸福になり得る筈です!インドゥラ、インドゥラ、私に元の生活を戻して下さい!私が熱望している幸福、私の心が無我夢中になるくらいにシータの愛をもたらせて下さい!あぁ、別の人生で10世もの地獄の様な生活を送らねばならぬのか!
インドゥラ
人生で10世もの苦痛・・・それは狂人だ!
アリム
私は待ち続けます!
インドゥラ
行け!神はまだお前の苦痛を哀れむ。再び生きるが良い!
アリム
あぁ、慈悲深い神よ!
インドゥラ
この者はこの者自身だ!だがそうでは無いかも知れぬ!この者の肉体は死んでいるが、人間界で再び歩く事になろう。
天の住人達
この者はこの者自身でしょう!
インドゥラ
この者の永遠の魂は死すべき肉体に入るであろう。再び話し、生活をし、愛するものとし、苦しむものとする!
天の住人達
この者はこの者自身でしょう!だがそうでは無いかも知れない!肉体は死んでいるが、再び地上を歩く事になるでしょう!
インドゥラ
この者はこの者自身ではないかも知れぬが、再び生きるであろう!
天の住人達
この者は再び話し、魂は再び肉体を持つでしょう!永遠の魂は声を持つでしょう!そしてこの者は生きるでしょう!愛するでしょう!
インドゥラ
お前はもう王にはなれぬであろう。粗末な身なりで群衆の中へ謙遜して入る事になろう。また私の独りの力でお前を保護するものとする!シータがお前に対して忠実か裏切るかどうかは、一つの運命としてお前を束縛する事になろう。また、彼女が死ぬ時はお前も共に死ぬ事となる!お前はこの試練に立ち向かえるのか?気にはならぬのか?
アリム
私は立ち向かって行きます!
天の住人達
この者は、この者自身でしょう。だがそうでないかも知れない。肉体は死んでいるが地上で再び歩く事になるでしょう!永遠の魂は再び肉体を持つでしょう!魂は再び声を持つでしょう!この者は再び生きるでしょう!そして愛するでしょう!魂は肉体を持つでしょう!この者は生きて愛するでしょう!神は幸福なのです!

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