歌劇「ラオールの王」(4)

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第五幕より(2)

第五幕より(1)
シータ
私は新婦の部屋を逃げ出して来たのです。シンディア様は私を探しているに違いありません!あの方は脅威を露にして私を殺そうとしていることでしょう。あぁ、私はあの方の激怒以上に愛情の方が怖いのです!自分自身を守る為にたった独りでここに来て慈悲を願ったのです。
あの方はティムール様のお言葉も無視なさいました。誰も今のあの方を止める事は出来ないのです!きっと私をここまででも追跡して来る事でしょう。しかし、あの方に仕えている兵士達は何が起ころうとも何も得られるものは無いのです。
神殿での死を何があっても止められる事は出来ません!そうです!もうその時が来たのです!
私はいつもの生活で飽き飽きしている自分の心を愛の力でなだめる事が出来ます。それに私は最愛の人に付いて参ります!
死よ、どうか私をこの悲嘆からお救い下さいませ!あぁ、の残酷な過去との別れ、無我夢中の至福の為の甘い死は私から引き裂かれた愛情を取り戻してくれる事でしょう。
光を浴びた青空の楽園で私達は再会し、永遠に一つとなるのです!
(インドゥラの像に祈りながら)
どうか私の純粋な心、誓約、希望をお聞き届け下さいませ。暗闇の中で光が私に微笑みかけるかの様に、私は汝の御前で死ぬ為に戻って参りました。
インドゥラ、どうか私の魂をお受け取り下さいませ!どうか死に寄って導かれます様に。
残酷な過去との別れ、光浴びた青空の楽園で私達は永遠の再会が出来ます様に!
時は来ました!私は貴方様に付いて参ります!誓います!

尼僧達
夜空を御覧なさい!
シータ
お祈りをしているのですね・・・。
尼僧達
夜空を眺めましょう。姉妹よ、私達とお祈り致しましょう!
シータ
前夜、最初の影が落ちた時、私が晩祷を歌った時の様に・・・再びあのお方を見るのです。
尼僧達
星は私達の頭上で銀色の光を流すのです。インドゥラ、天の王インドゥラ、私達は汝を崇拝致します!

アリムが柱の間から姿を現します。彼は瞑想に没頭しているシータにゆっくりと近付いて行きます。
シータ
あの方の手は私に触れる事はありませんでした。微笑んで、囁いて、そして次の日にまた現れるのです。
尼僧達
夜空を御覧なさい。
アリム
シータ!
シータ
アリム様!
アリム
彼女だ!
シータ
生きていらっしゃったのですね!
アリム
シータ、私だ!
シータ
生きてらっしゃる!この方は生きていらっしゃったわ!

アリム
私は遂に君を抱き締める事が出来た
!無我夢中に望んでいた事だ!愛しい心よ!私は再び君を抱き締める事が出来たのだ!・・・いや!違う!愛情は私を惑わせる!私の元から去れ!不誠実な者よ、行け!君を待つシンディアの元へ戻るが良い!

シータ
シンディアですって!私はあの方の元から逃れる為に、貴方様と会う為にここへ来たのです!私を疑っていらっしゃるのですか?

シータは気絶してしまいます。
アリム
あぁ、私を許してくれ!事実を知ったのだ!あぁ、シータ、私に大事な子供を授けてくれ!君の目を開いてくれ!
シータ
あの方です。嘘の夢ではないのです。生きてらっしゃるの。雲は散って行き、生まれたばかりの希望の太陽はあの方の優しい一目で輝くのです。
アリム
そうだ。私は君を愛しているのだ!
シータ
死から戻って来られた貴方様にもたらされた力強い手、その為に私はどれだけ泣いた事でしょう。
アリム
今の事だけ考えよう。私は生きている!
シータ
あぁ、無常の幸福!
アリム&シータ
見て!世界から遠くに人の目から遠くに、私達の愛は勝ち誇って永久に行き続ける事でしょう!あぁ、私達は楽園を再び見つけました。

2人が出発しようとすると、ゴングの音が柱の間から鳴り響き、寺院の至る所まで反響します。辺りは物凄い光で満たされ、2人は立ち止まり慌てます。
アリム
あの明かり、それにあの恐ろしい音!
シータ
不運なもの・・・私は忘れようとしていたのです!あのシンディア様の事を。
アリム
あぁ!
シータ
もうダメです!
アリム
何を言ってるのだ?!そんな事はない!ここにはかつて私を君の元へ導いた秘密の抜け道があるのだ!さぁ、急ごう!

第五幕より(2)
アリムとシータは秘密の抜け道の方へ走って行きますが、もう既にそこにはシンディアが脅威をさらして立っていました。
シータ&アリム
シンディア!
シンディア
俺の妃と一緒になりやがってー!

シータは必死になってシンディアに対して反抗します。
シータ
あぁ、神のお言葉ではありません!不運な方、これは神のお言葉ではありません!私達に血で汚れた手を上げないで下さいませ!このお方は貴方様の王なのです!当然の忠誠心をお守り下さいませ!復讐が貴方様に容赦無しに成されるのを気になさらないのですか?!
アリム
従え!シンディア!
シンディア
お前に従うんかい!えぇー!こら!
シータ
このお方は貴方様の王です!
シンディア
お前らは2人共狂っとるんじゃ!この俺を脅してるつもりやろけどなぁ、力はこの俺の側にあるんじゃ!ダボがー!(シータに対して)今直ぐにでも俺は力づくでお前を永久に俺のもんにしたるからなぁーーー!こらー!
アリム
この悪党め!
シンディア
こいつは俺のもんになるんじゃー!
アリム
無駄な事だ!
シンディア
本間の事に決まっとるやろがぁー!この俺の力は絶対的なもんじゃ!ボケが!
シータ
いいえ、シンディア様、絶対に嫌です!!!

アリム
あぁ・・・!

シンディア
おい!護衛官来い!

アリム
全ては・・・死だけだ!
シータ
絶対に嫌です!!!
シンディア
こらー、来んかい!
シータ
私は貴方のものではありません!!!

シータは遂に自らの身体を持っていた短剣で突き刺し自害をはかります。同時にアリムもシータと同じ風に吹かれたかの様にしてよろめきます。
アリム
シーターーー!!!神よ!何という事をなされるのですか!
シンディア
うえ〜・・・俺が復讐される!

シンディアは次第に霊的な恐怖に駆られ始めます。
アリム
貴方は私達に何もして下さらなかった!彼女の死を感じている!慈悲深い神は私と彼女を打ちのめした!!!
シンディア
俺は・・・神の力を・・・存在を感じとるんや!

アリムとシータは寄り添い、抱き合っています。
アリム&シータ
あぁ!
シンディア
こいつら・・・天上をウロついとるつもりなんか。
シータ
アリム様、貴方様は私のものです!
アリム
シータ、君は私のものだ!
シンディア
クソー、こいつら・・・勝ち誇ってやがる!
シータ
私は貴方様を愛しております!
アリム
私は君を愛している!それに私は運命を祝福する!

シンディア
俺はこいつの事が好きやったのに!こいつを失ってしもうたーーー!
アリム
私達の心は何時も一つだ!

シンディア
死の平等かぁ・・・
シータ
あぁ、私は貴方様を愛しております!
アリム
私達は一つなのだ!
シンディア
・・・こいつら・・・これで幸せなんや!
アリム&シータ
私はあなたの腕の中で死ぬ事が出来ます様に!
シンディア
神よ、この2人を引き離さんでおくんなまし!

暗かった神殿の中が明るくなり、辺りが神インドゥラの楽園の神聖な魂の輝く光景になります。アリムとシータはお互い寄り添ったまま神インドゥラが祭られている祭壇の前で跪きます。そんな様子をシンディアは自身の感情を押さえながら見守っています。
遠くからの声
我々は昇天して行くのです。
アリム&シータ
思いも寄らない華麗さ!
シンディア
幸せなんや・・・
アリム&シータ
目の前に現れた神インドゥラの楽園へ喜んで参ります!
(中略)
遠くからの声
眩い光!我等の魂は霊力のある庭を通って浮かんで行くのです。

アリムとシータの魂の抜けた亡骸は祭壇上からゆっくりと沈んで行きます。2人は楽園の中で変わっていった様に見えます。
遠くからの声
全ては光なのです!
シンディア
あぁ、俺は2人にえらい事しでかしてしもうたーーー!神に罰せられるーーー!!!

The End!



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